2011年12月11日日曜日

道具帳


私たちの職業である舞台美術家のデザイン画は道具帳と呼ばれ、現実の寸法比に基づき表現します。もちろん個々の舞台美術家により表現技法は様々です。私も色々の表現を試して来て、現在は色鉛筆によるモノクロの表現をしております。
これはずいぶん前の道具帳ですが、アクリル絵具によるエアブラシ技法で描かれたものです。
この道具帳は9月の罹災の折り、濡れて使えなくなったものや、不要と判断したものを整理していた時に写真家の海沼武史が持っていた物なのです。
彼は額装ディレクターの中村明博(八王子の額、美術用品店 東美の店長)と画策して私の新たな人生の出発点に合わせてプレゼントしてくれました。
私の舞台美術家人生の中では道具帳を絵画と捉えた事は有りません。あくまでも現実に舞台に乗せる為の手がかり、其の為のデザインを表したものなのです。
しかしこの額、舞台を客席からの視点で見たようなある種の緊張が張りつめています。
劇場のプロセニアムアーチそのものなのです。中村の思考と表現が隅々まで行き渡っているのが解ります。ありがとう。
これからの再出発にこれを手がかりに多くの仕事に取り組んで行きます。
いつも目につくところにこの額を飾り、これからの人生を悔いなく生きて行きます。
来年はまさに再出発元年になる事でしょう。よろしくお願いします。